蒔絵1

 漆塗りの屋台には,装飾としての蒔絵が施されている。下に紹介する3枚は,いずれも掛川市二瀬川の屋台。
 まずは,側面にある「唐獅子牡丹」。夜になると怪しげに浮かび上がるかのような感じがする,私のお気に入りの作品。
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 屋台後部にありながら,この屋台の一番人気の感がある「月と兎」。月は,日本最大級の白蝶貝,兎は,約20個の卵の殻を貼り付けた,「卵殻(らんかく)」という技法。
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 4枚の障子の下部にある蒔絵(題名は無し)。
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 長野県塩尻市木曽平沢地区に伝わる漆工芸は,日本の伝統工芸の指定第1号になり,1998年の長野オリンピックではメダルを製作した。
 この屋台の漆塗りは,大正4年に行われたが,老朽化が目立ったので,平成17年にその地区の中國(なかくに)漆器店によって修復がされた。社長の宮原豊氏は,文化財の修復にも思い入れが強い。蒔絵は,深井公氏が担当した。欄間の下と障子の下にある「螺鈿(らでん)=青貝細工」も深井氏による。
 卵殻技法は,1枚目の写真の欄間と欄干との間(「浜縁(はまえん)」)にもあり,約90個の卵が使われている。
 深井氏は,どんな卵の殻が最適であるかも入念に研究し,作品の完成までに200個ほどの卵を使ったということで,深井氏と宮原社長の家族は,しばらくは卵料理ばかり食べていたそうだ。