漆塗りの屋台には,装飾としての蒔絵が施されている。下に紹介する3枚は,いずれも
掛川市二瀬川の屋台。
まずは,側面にある「唐獅子牡丹」。夜になると怪しげに浮かび上がるかのような感じがする,私のお気に入りの作品。
屋台後部にありながら,この屋台の一番人気の感がある「月と兎」。月は,日本最大級の白蝶貝,兎は,約20個の卵の殻を貼り付けた,「卵殻(らんかく)」という技法。
4枚の障子の下部にある蒔絵(題名は無し)。
この屋台の漆塗りは,大正4年に行われたが,老朽化が目立ったので,平成17年にその地区の中國(なかくに)
漆器店によって修復がされた。社長の宮原豊氏は,
文化財の修復にも思い入れが強い。蒔絵は,深井公氏が担当した。欄間の下と障子の下にある「
螺鈿(らでん)=青貝細工」も深井氏による。
卵殻技法は,1枚目の写真の欄間と欄干との間(「浜縁(はまえん)」)にもあり,約90個の卵が使われている。
深井氏は,どんな卵の殻が最適であるかも入念に研究し,作品の完成までに200個ほどの卵を使ったということで,深井氏と宮原社長の家族は,しばらくは卵料理ばかり食べていたそうだ。