アイソン彗星は如何に

 アイソン彗星が新聞やテレビで報道されている。昨年の今頃は,「満月よりも明るくなるかもしれない。」と騒がれ,私も「来年いっぱいは死にたくない。」と思ったものだ。しかし,期待通りの明るさにはなっていない。
 日食や月食のように天体の運行から算出される天文現象と違って,彗星の光度予想は,不確定な要素が大きいので,なかなか難しい。今年の3月に話題になったバンスターズ彗星も,話題ほどには明るくならなかった。1974年のコホーテク彗星も期待を大きく裏切った。
 1972年のジャコビニ流星群に続いての裏切りだったので,これ以後しばらくは,東京天文台は,大げさに宣伝するのを控えたほどだ。
 そうした風潮のある中で1976年に予想外に明るくなった彗星がある。「20世紀で最も美しい」と言われたウエスト彗星だ。画像は,インターネット上で拾った物で,金野栄敏氏の撮影だ。
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 1997年に現れたヘール・ポップ彗星も明るかった。これもインターネット上で拾った画像で,小林一茂氏の撮影だ。青い尾は,イオンが光っているもので,黄色っぽくて曲がっている尾は,彗星本体から放出された物質が光っていて,それぞれ「タイプⅠ」「タイプⅡ」と呼ばれる。ウエスト彗星では,タイプⅡが発達したが,タイプⅠがきれいに見えていた期間もある。
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 次は,2007年のマックノート彗星。見事な尾を見せたが,南天でのことだったので,日本では見られなかった。おそらく「21世紀で最も美しい彗星」と語られることだろう。画像は,インターネット上でのもの。なお,この彗星は,太陽に近づいた頃には,昼間に肉眼で見ることができたとのこと。
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 アイソン彗星が太陽に最も接近するのは明日。太陽から僅か120万キロの所を通過するので,崩壊してしまうことも考えられているが,予想外の増光をして,明け方の東天に素晴らしい姿を見せてもらいたいものだ。